「#マクベス」のマカオ公演の劇評その2です。
Jornal Infor Macaoという新聞に載ったようです。
(本文中で、台湾のチームと比較されていますが、僕らは台湾チームのゲネプロを見て感動しましたことは伝えておきます。)
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報道劇評
8月28日に旧裁判所で初めて観た日本と台湾の2つの作品は、同じものが香港の黒盒劇場でも演じられたが、小道具を単純化し、通常の舞台は作らず階段式の観客席前のスペースで演じられた。まず登場したのは日本のTheatre Moments(瞬間劇場)で、2003年に活動を開始し、西洋古典劇を現代的な演技で表現しなおすプロの劇団である。後半は台湾の黎明技術学院の芸術学部の演劇グループによるもので、同大学の人材養成プログラムの賜物だ。
両者のよって立つところは全く異なり、全体を通していえば、日本の劇団の1時間半の公演は構成も完璧で前後の呼応もよく、演出家佐川大輔のリードのもと「日本流の肢体劇」の演技が堂に入っていた。テンポの起伏が作り出す演劇性がよく発揮されていた。8名の役者が「マクベス」をカラフルに彩り、緻密な演技によって、か弱さと怖さが入り交じる人間性の複雑さを底知れぬものとして見せつけた。
「マクベス」劇中のキーパースンであるマクベス夫人の複雑な性格をどう表現するかが、本作の見どころであった。芝居の冒頭、観客とインタラクティブに接する時間が設けられ、15分におよぶゲームで劇団の男優と通訳の女性が観客とウォーミングアップしたあと、当選者を選んで演技スペースに来てもらい、マクベス夫人の印象について四択質問が出される。A 悪女、B 夫を愛する女、C 狂った女、D 恨み深き女、の4つから答えを選ばせるのだが、実のところマクベス夫人の印象と性格は4つの答えの総和と言ってもよく、それがまた物語そのものでもある。それを肢体の動きで表現し、使う小道具は簡単な木のはしごが4つだけだ。
しかし「肢体劇」とはいえ、日本語のセリフもかなりあり、これも劇全体を推し進め情感を加えていく上で大事な要素だ。進行に合わせてプロジェクターで中国語・英語・ポルトガル語の字幕を出した。からだの動きに重点をおいて人物の性格を表現しながらストーリーを進めていく現代劇の手法ではあるが、ことばを完全に放棄したパントマイム劇ではない。
まぎれもなく、台湾の劇団員の演技レベルにはムラがあり、日本語で語られる「マクベス」のほうが心をとらえるものがあった。奇しくも演劇とは、ことばによるコミュニケーションとは別の次元で観客との関係性を打ち立てて意思疎通し感動させなければならないものだということを証明したと言えよう。ことばは確かに重要だが、さらに重要なのはやはり役者の演技能力であり、役者が伝えるメッセージが有効かどうかなのである。
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言葉を超えて伝わったことがよくわかる劇評、本当にうれしいです。
さて、今は11月のせんがわ劇場の市民参加演劇、そして12月の「走れメロス」マカオ公演の稽古中です。
そちらのことも、載せていきますね。
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